脳画像の診方 圧迫初見の評価

脳の圧迫
人間の脳は頭蓋骨に包まれており、脳の周囲には脳脊髄液が満たされています。
頭蓋内圧は頭蓋骨内部の圧のことで、脳や脳脊髄液を含みますが、脳にはこの頭蓋内圧の自動調節能があります。
頭蓋骨内部の圧=頭蓋内圧で表されます。
- 頭蓋骨内部の圧=静的自動調節能(血圧の変化に伴う短時間の脳血流量変化は考慮されない調節機能)
- 頭蓋内圧=動的自動調節能(急激な血圧変動に対する調節機能)
頭蓋内圧は、モンロー・ケリーの法則によって決定されます。
脳の血流は灌流圧によって調節されており、水は高いところから低いところへ、圧力の差によって流れるため圧較差が大きいほど勢いよく流れます。同様に、動脈圧も灌流圧という圧力で頭蓋内に流れ込むのです。
モンローケリーの法則
頭蓋内圧=脳実質+脳血流量+灌流圧・量+α
頭蓋内圧は頭蓋内占拠性病変(頭蓋内出血、脳腫瘍、脳膿瘍など)、脳実質や脳室の拡大(脳浮腫、脳水腫)など脳実質や脳室の容積が拡大することによって亢進します。
頭蓋内圧亢進により生じる症状は急性と慢性で下記のように異なります。
圧迫所見(mass effect)
圧迫所見は頭蓋内圧亢進の指標となります。
圧迫所見はモンロー孔のレベルの画像での正中線偏位(midline shift)と中脳のレベルの画像での脳底槽の圧排から判断することができます。
モンロー孔のレベルで見られるmidline shiftは5mm未満で軽度、5mm以上10mm未満で中等度、10mm以上で重度と判定します。
カーノハン切痕
圧迫所見が強くなると、脳ヘルニアが生じます。
脳ヘルニアには数種類ありますが、特に重要なのが鉤ヘルニアです。
鉤ヘルニア:側頭葉内部の突出部である鉤が小脳テントの開口部に陥入することです。
鉤ヘルニアが生じると、中脳大脳脚が対側の小脳テントに押しつけられて損傷を受けることがあり、このようにして生じた大脳脚の損傷をカーノハン切痕と呼びます。
カーノハン切痕が生じると対側の運動麻痺が生じます。
錐体路の大脳脚における体性感覚局在は以下の通り配列しているため、下肢の領域が最も損傷を受けやすいです。
今回参考にした文献、書籍は以下の通りです。
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