脳幹を極める まとめ編
脳幹とは
脳幹は中脳、橋、延髄によって構成される部分で、上方には大脳が、後方には小脳が、下方には脊髄が位置しています。
脳幹はこれらと神経繊維を介して連絡し、運動機能や認知機能、摂食・コミュニケーションなど幅広い機能に関与します。
脳幹の脳画像
脳幹の脳画像を把握する上で重要なことは、それぞれの構造を理解することです。
これについては違う投稿に記載していますのでぜひご覧ください。
中脳
中脳は大脳(厳密に言えば間脳)との接続部にあたります。
中脳の吻惻は大脳へ向かうに従って扇状に広がる構造をしており、この広がりによって構成されるのが大脳脚になります。
中脳の大脳脚は左右で対をなし、大脳皮質からの下降性繊維が通過する需要な部分であり、ここには
- 前頭橋路
- 頭頂橋路・側頭橋路・後頭橋路
- 皮質核路・皮質脊髄路
が通ります。
これらの下行路は、同側の大脳半球から起始しており、同様の配列が内包でもみられます。
大脳脚の尾側は黒質を挟んで赤核と内側毛帯が位置しています。
赤核には、大脳および小脳からの入力があり、赤核脊髄路を介して運動の制御に関与します。
内側毛帯には末梢からの感覚情報が大脳へと上行する過程で通過していきます。
赤核と内側毛帯の尾側には、網様体が位置しており、姿勢制御に関与しています。
このため、大脳脚とその周辺は、運動機能や感覚機能に大変重要となります。
脳画像においては中脳はミッキーマウスの耳の様な部分が見られるため、重要なランドマークにもなります。
ぜひ覚えておきましょう!
脳卒中患者で中脳中脳に主病変がみられる方は稀ですが、近接する視床や大脳基底核、側頭葉に大きな損傷が生じると病変からの圧排によって大脳脚が損傷されることも多いため、重要なポイントになります。
橋
橋の外観は丸く膨らんでいるのが特徴です。
橋底部である橋の吻側には、皮質核路・皮質脊髄路が下行し、同部位には小脳へ向かう皮質橋路が横橋線維を介して左右交又しており、皮質核路·皮質脊髄路は分断されながら下行します。
そのため、病変によって橋の吻側が損傷されても、皮質脊髄路そのものは壊滅的な損傷を免れることがあります。
皮質橋路は大脳ー小脳系システムの重要な構成要素で、大脳-小臓脳系システムは、運動ループと認知ループに大別されます。
皮質橋路の損傷により運動ループが障害されると、主症状として小脳性失調を呈します。
認知ループが障害されると,注意機能や遂行機能にかかわる問題が生じます。
左右交スする横橋維維が損傷されると、小脳性失調を両側肢に呈する可能性があります。
橋被蓋の下部には、中小脳脚、下小脳脚があり、中小脳脚は大脳から小脳へ向かう線維が、下小脳脚には脊髄から小脳へ向かう線維が通過します。
いずれの小脳脚も、運動制御と密接に関連する大脳-小脳系システム、脊髄-小離系システムの神経回路であり、画像を見る際に重要なポイントになります。
橋下部の小脳脚の近くには前室神経枝が存在しており、前庭系は小脳とともに運動制御.特にバランス制御にとって重要な役割を担っています。
延髄
延髄は脊髄に向かって収束していくため、脊髄と類似した細い構造が特徴です。
延髄は脳幹の最下端に位置しており、延髄と同一の水平断スライスでは、側頭葉と小脳の下縁がともに描出されます。
また、延髄の周囲には頭蓋底の骨が近接しているために画像ノイズ(アーチファクト)が発生しやすく、CT画像で延髄の細部を読影することは困難となります。
MRI画像では画像ノイズが生じないため、延髄の観察が容易になります。
橋で分断された皮質脊髄路は、延髄の物側で収束し錐体路を構成します。
尾側には網様体や後脊髄小脳路(下小脳脚)前庭神経核、外側脊髓視床路が散在しています。
延髓外側症候群では,それらの損傷に起因して,同側の小脳性失調や対側の温痛覚障害、めまいなど特徴的な症候を呈します。
また、皮質脊髄路の尾側に位置する下オリーブ核は、運動学習にかかわる重要な神経核となっています。
今回参考にした文献、書籍は以下の通りです。
これらは私がすごく愛用しているもので、絵もこれらのものを参考にさせていただいて書いています。ぜひ購入して一緒に勉強していきましょう!