脳の運動機能回復メカニズム

脳の解剖と機能について紹介します。

脳の運動機能回復メカニズム

脳の修復

脳出血や脳梗塞などの脳損傷後におこる脳の構造的・機能的な回復のことを脳の修復といい、
その過程は自然に、かつ治療によって導かれていきます。
これは通常、質的にも変化しながら回復していくもので、脳の可塑性はこれに関わります。
脳の可塑性とは、脳・神経系が外界に適応する過程において常に構造的、機能的な変化を起こしていく事を言います。

脳の修復は時間経過とともに自然に可塑的変化を起こしていくが、この時間感受性の特性を生かしたもの
リハビリテーションの早期開始になります。
また脳の修復は治療的に導くことが明らかにされており、適切な治療を行うこと
脳の機能回復を引き起こすために重要であることも示されています。

脳損傷後の可塑性の機序

メカニズム時期
[局所的変化]
浮腫の改善
数週間から2ヶ月
ペナンブラの改善
数時間から数週間
ディアスキシスの改善数日間から数カ月間数
[脳の再組織化]
神経伝達物質の変化週間から数年間
抑制経路(サイレントシナプスの変化)直後から数カ月間
シナプスの形成数週間から数カ月

脳浮腫

 

脳浮腫の原因は、
高血圧による脳出血が主で、全体の70%程度を占めます。
損傷した脳組織の周辺領域で起こり損傷した部位の周辺が浮腫によって圧迫を受けることによって
それらの領域に一時的に機能不全を起こします。

脳梗塞では発症後早期(24時間以内)は細胞毒性浮腫により浮腫を生じ、8週間程度継続することがあります。

血管性脳浮腫:血液脳関門(BBB)の破綻により、血管透過性が亢進し、血漿中のNaイオン、アルブミンなどが間質に流入することで生じます。
その後浸透圧勾配によって血漿中の水分が間質に流入し浮腫となります。
原因:脳腫瘍、脳挫傷、脳出血、脳虚血

間質性脳浮腫:脳室では髄液の産生と吸収が行われており、脳室の髄液が過剰に貯留することで間質へ漏れ出し、浮腫を生じます。
原因:水頭症

細胞毒性脳浮腫:イオンポンプの障害により細胞内にNaイオンが蓄積され、浸透圧勾配によって間質の水分が細胞内へ流入し、浮腫を生じます。
原因:脳虚血(急性期)、脳梗塞(急性期)、低酸素血症、中毒、肝性昏睡、尿毒症

 

ペナンブラの改善

ペナンブラとは脳梗塞や脳出血などで血流が途絶えた部分(脳虚血中心部)の周辺部分の壊死が起こらない程度の
血流低下のことであり、梗塞巣と正常脳組織の中間に位置する神経細胞が乏血状態になることを指します。
この乏血状態からの回復が早ければ早いほどその後の機能回復が良好となります
主に3時間程度の回復がターニングポイントとなります。

 

ディアスキシスの改善

ディアスキシスとは別名「機能乖離」と呼ばれ、脳損傷部位とは隣接していないが神経線維により連結されている部分が一時的に
代謝や生理機能不全を起こすことを言います。
ディアスキシスはいくつかのタイプが存在します。

diaschisis “at rest” :局所の脳損傷が遠隔部位の代謝低下を惹起してしまうこと。
functional diaschisis:正常な脳部位が脳損傷後にその働きを強めたり、弱めたりすることで本来のつながりを弱めてしまうこと。
Connectional diaschisis :ネットワークの結合の強さや方向が増加したり、減少したりする。
Connectomal diaschisis :連結しているネットワークの損傷がネットワークへの接続のしやすさを増加、減少させることで、
広範な脳ネットワークの組織化を惹起する。→局所の働きの低下ではなく、ネットワークの強化や低下を示す。

脳の修復における中枢神経の再組織化

中枢神経の再組織化では、シナプス形態変化に伴う、シナプス接続の可塑性を示す。
神経組織は、脳出血や脳梗塞によって神経細胞死が生じるか、経路の損傷により軸索切断が生じます。
アンマスキング:これまで使われていなかったもしくは接続が弱かった部位の接続が強化される
側芽:神経が切断された部分から軸索が伸び接続される。
移植:将来的に細胞の移植により、神経接続の回復がはかれると考えられている。

参考文献
酒向正春,大村優慈,リハに役立つ脳画像 第6,株式会社メジカルビュー社,2017
森岡周,リハビリテーションのための脳・神経科学入門 改訂第2版,協同医書出版社,2016
岡庭豊,病気が見える vol.7 脳・神経 第1版 ,株式会社メディックメディア,平成26年

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